「楷書」って日本文化なの?
「日本一ゆるい書道手本」を提供しているJA書道コンクールは書体が「楷書」と指定されています。
ここで「どうして楷書なの?」と疑問を持つ子供も、大人もいないと思います(書家でも、疑問を持たない)。
日本人の多くは「昔から日本人は楷書で文字を書いていた」と思っています。
それは「国風文化以降、日本独自の和様を用いて日本語を書いていた」という知識が一般化してないため、「日本人は昔から楷書を書いていた」と勝手に思い込んでいる方が多数います。
実は「楷書」(中華式の唐様)は明治政府が採用したことで(日本語を活版印刷するため)、現在のように定着した新しい文化です。
江戸時代は、寺子屋を通じて、日本式の和様”御家流”という書き方が普及していました。
一方で、江戸時代の川柳に「”売家”と唐様で書く三代目」(※)があり、
江戸時代、唐様が非主流とわかります。
文化庁も「楷書は日本文化」と誤認
東京オリンピック関連で、日本文化を推す動きの中で、書道の「楷書」も入っています。
特に、驚いたのは「文化庁」がタレントを使って「楷書」を日本文化として紹介しはじめたことです。
楷書は英語で「Chinese characters」なので、英語圏の方は「Chinese charactersが日本文化?」となるかもしれません。
文化庁の「楷書は日本文化」は、国民が誤解するので「文化庁 参事官(芸術文化担当)付 新文化芸術創造活動推進室」にメールで訂正のお願いをしました。
そして、返答をいただきました(ちなみに、官僚へのお願いメールは無視されることが多い)。
多くの方に日本の文化に触れてもらうことを意図した企画として動画を制作いたしました。
「書道」も日本では広く親しまれている文化の一つととらえていることによるものです。
文化庁の日本文化の考え方は、「日本で広く親しまれている楷書=日本文化」ということでした。
日本側がこの認識だと、今後、外国が
「アメリカで広く親しまれているSUSHI=アメリカ文化」
「フランスで広く親しまれているJUDO=フランス文化」
という主張した場合、抗議もできず許容しなくてはならない不利な立場になると思います。
150年続く「楷書縛り」から開放してよいのでは?
東京オリンピックの大会ビジョン「多様性と調和」です。
アジアのメーカーが、かつて欧米で製品を売る際に、広告に「富士山」「力士」を使ってきた経緯があります。
「楷書は日本文化」は、まさに、それに近い悲しい行為です。
せめて文化庁は「書道(楷書)は、中国発祥で広く親しまれている楷書(ユネスコ登録済)=中国文化」という認識を持ち、他国の文化を尊重してほしいと思います。
同時で、多様性ある日本語の筆記文化が醸成される土壌を作るために、文字がデジタル化した今から徐々に「楷書縛り」からの開放を提案します。
文化がなければ、作ればいい
今回、「楷書(Chinese characters)は日本文化」という文化庁の主張は危険だと思うので抗議をしました。
指摘した部署名「新文化芸術創造活動推進室」は革新的なことに理解がありそうですが、未だに問題となった「楷書は日本文化」と誤解させる動画は放置なので、それが答えです。
ただ、文化マイノリティでもある私達は、文化庁に「和様の普及」を理解してもらう努力は続けなければなりません。
実は、この問題の解決はカンタンで、現在の「楷書」優遇を止め、平等に扱えばいいのです。
そうすると、書家からも不人気の楷書(人気なら楷書だらけのはず)は誰も使わなくなり、一方、日本発祥の「和様」が生まれると思います。
JA書道コンクールへの和様の手本の提供も、そんな民間でできる行動の1つだと思っています。
皆様のご支援いただきますようよろしくおねがいします。
※初代が苦労して作った家屋敷も3代目となると売りに出すことになる。商いをおろそかにし中国風の書体などを凝って習ったおろかさが『売家』のはり紙にあらわれていることを皮肉った句
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