審査結果と受賞作品の公開
2017/10/13-15 東京芸術劇場で行われた「第7回 和様の書展」の審査結果になります。
審査作品 40(38)
審査員 27(22)
受賞作品 17(14)
受賞率 42.5%(36.8%)
となりました。※()内は前回の第6回。
代表所感「りんごが木から落ちる」に何を感じるか
審査員の各賞へのコメントは、今後出版される作品集に掲載する予定なので、割愛をします。
2回目の審査ということもあり、2回目の審査員は、前回と同様の傾向を支持した方と、異なる視点で審査を行った方がいました。
和様の書展は、審査は書の専門家は一切入っておらず、会場での審査を公開しております。
そのため、当書展は、文化庁後援等を受けている大手公募書展の「公然の秘密」となっている賞の配分は行っておりません。
書の専門家ではないため受賞に一喜一憂する必要はありませんが、少なくとも他分野の専門家である審査員が応募作品の中から1票を投じてくれたことが、和様の書展の価値が上がっていくことで、将来的には、大きな価値に変化すると思います。
和様の書展への注目が集まれば集まるほど、審査員も目が肥えて、高いレベルの和様の理解者になっていることでしょう。
現段階で、和様の書展に出品される方は、多くの人がなんとも思わない「りんごが木から落ちる」現象を見て、何かを感じた人です。
少なくとも芸術で重要なマイノリティなセンスを持っている人なのです。
Love&Peace系の作詩傾向から次の展望を
今回、作詩をしっかりされた方が選ばれる傾向が出てきました。
SNSなどでよく見かける書の作詩傾向として
「あなたとの出会いに感謝。」
「そのままの君でいい。」etc.
といったLove & Peace系の詩がよく見られます。
Love & Peace系は、詩として表現がストレートです。
逆に、詩に深みがないため、将来的には、書での高い説得力を求められます。
これは、既存の書道で人気の山頭火の詩なども同様です。
わかりやすい詩、著名な詩を選ぶと、より高い書表現や説得力が必要です。
将来的に、和様を引っ張っていきたい方は、書だけではなく、同時に書風に合う詩の作り方について考えていかれると良いでしょう。
ちなみに、すでに今回の審査で美術評論家 黒瀬さんは、評論で、そこに触れています(あくまで上級者ですけどね)。
ということで、ぼくが選んだのは、福岡みかさんの「I see.」です。一幅の画面を越えて関係を作っていた(作品の外側を意識していた)唯一の作品であり、さらに、人生訓やわかりやすい詩的要素に向かわず、ほとんど意味の無い言葉(相槌)を選んでいるのも良かった。 pic.twitter.com/yBWJcYMunU
— 黒瀬陽平 (@kaichoo) 2017年10月17日
今回、10代の出品者が2名いましたが、背伸びした言葉選びや作風がマイナスに作用したかもしれません。
10代にしか作れない作品で勝負すれば、結果は異なったと感じる要素は十分感じられました。今後に期待ですね。
最低限の線質は必要
今回の公募出品者は「不得手な部分で勝負した」傾向があると感じます。
初心者に近い方が、長文を書きたい気持ちは非常にわかるのですが、線質や構図の構成で、マイナスが増えるため不利です。
師がいない和様の場合、「臨書(古筆、古典の写し書き)」で線質と文字のバリエーションは、一定数カバーできるでしょう。
ただし、臨書は大学受験の参考書のようなもので、目的達成のため、離れる必要もあります。
また、公募展会場で作品を見たり、最低でも和様の書展のバックナンバーの作品集をチェックすると異なる結果になると思います。
従来の公募書展のように創作活動に余裕があれば、賞狙いと将来への育成作品を分けて、複数出品されるのもよいでしょう。
(今回、複数出品者は、全員、受賞をしています。)